スタンフォードの監獄実験の不備について
やーめーろーよー。いくつかこれを参照してんだからやーめーろーよー。
あとwikiも速攻更新されてた。
スタンフォードの監獄実験は、まぁざっくり言えば人間には元から残虐性があり、「環境」がそれを開放させる、と。今まで伝えられていたあらすじとしては、
- 囚人役と看守役に別れて「監獄生活」を演じる。被験者は新聞広告で募った大学生などの一般人達。
- 看守役は「自然と」残虐性を帯びていき、最終的には禁じられていた暴力まで振るうようになった。
- 囚人役の内数名は精神を病み、治療に10年かかった。
この実験の結論として、人間は潜在的に残虐性があり、それが許される環境にいると自然と発露する、といった感じのもの。
この実験に再現性がなかったことから別の研究者が調査、「実験」と呼ぶには相応しくない、結果を狙ったかのような研究内容が明らかになった、というもの。
◆目次
- 実験を行ったフィリップ・ジンバルドーが囚人役を手荒に扱うよう看守役に指導した
- 再現性がなかったことについて
- 発狂した演技
- 個人的には
◆実験を行ったフィリップ・ジンバルドーが囚人役を手荒に扱うよう看守役に指導した
いやまぁ、最初っからやりすぎと言うか張り切ってた感はあったよねあれは。本物の警察に頼んで自宅に押しかけて囚人役を逮捕してパトカーで連行するところから初めてるからなあれ。
看守役に「指導」している所を録音したテープが見つかったそうだ。
ジンバルドーは看守役へ指導したのは、暴力以外は非人道的な扱いしても良いとする内容だったとのこと。
「退屈させてもいい。不満を感じさせてもいい。ある程度は恐怖を感じさせてもいい……この状況において我々は完全な権力を有しています。彼らにはありません」
また、看守役はジンバルドーの期待に応えるように動いた傾向がある。ジンバルドーも「いい仕事ぶり」の看守役はわざわざ感謝の念を伝えていたようだ。
元看守「人間の性質の理解に多少なりとも貢献したので、なにかいいことを行ったような気がしていました」
ジンバルドーのアシスタント(刑務所長役)が看守役に「残忍な看守として振る舞うよう」指導していた録音データが残っている。この時点では看守役は強く反対している。
◆再現性がなかったことについて
まぁここまで来たらそりゃそうだろうとしか言えんな。伝え聞いていた「自然発生する」形では無理だった、と。これは人間のモラルが環境に打ち勝ったとも言える。やったね。
むしろ幾度か再現が試みられたって部分にドン引きなんだが。よく反対が出なかったな。
今回の指摘も再現に至らず、ジンバルドーの実験も具体的なデータが殆ど無いことから疑念が持たれたとされている。
実際「スタンフォードの監獄実験」はストーリー性が高いだろう。逆にそれを差っ引くと、まぁ確かになんもないな。
ジンバルドー自身が実験に「意欲的」、というかでしゃばりまくったことは当人がとっくに認めていたことだ。それも「立場に飲まれた」的なまとめ方をされていたわけだが、まぁこの点は嘘というか、最初からだったようだね。
◆発狂した演技
ぶっちゃけ他の点に異論はないのだが、ちょっとおかしくないかこれだけは。
囚人役のダグラス・コルピ。「発狂した囚人役」本人が、アレは演技だったと語っているのだが。
理由が「試験があったため、実験から抜け出したかった」。
この実験は二週間を予定されていた。実際には6日で終わったとされているが。新聞広告で人を集めたとしても期限くらいは告知するだろう。仮に囚人役に希望を持たせないためにそこをぼやかすにしても、ある程度の目安は伝えなければ参加してもらえないと思うのだが。
例えば期限がぼやかされてたにしても二週間~四週間、とかそういった告知の仕方しないか? 「いつ終わるかわかりません、それまで囚人として監禁されて帰れません」とかじゃ誰もやらんだろさすがに。
途中で試験があることを思い出したとか? 無理がないかそれは。仮病使って戻ろうとするほど重要な試験を忘れてバイトの予定いれるか?
wikiの方に記載されているが、この実験で「精神を病んだ」とされている囚人役達はジンバルドーが「10年間カウンセリングを続け」、今では後遺症が残っているものはいない、とされている。10年だ。
これが嘘だ、というならもうどうしようもないが、ベン・ブルムが指摘している監獄実験の不備は、あくまでもジンバルドーが意図的にそのような結果になるように動いていた証拠が見つかった点だ。少なくともこういった話に嘘があったという指摘ではない。
10年カウンセリングが必要なレベルの後遺症があった、とするなら一つ仮説を立てられる。カウンセリングの結果として、或いはダグラス・コルピ当人が「そういうことにしたい」可能性。
波紋なんてありませんでした。怪我させられるなんて絶対ないと分かっていましたから。看守が殴るなんてありえなかったんです。自分たちと同じ大学生で、とても安全な環境でした
この言葉は非常に「浮いている」。ベン・ブルムが指摘したとおりジンバルドーが実験結果を「デザイン」し、そうなるように動いたとするなら確実に「酷いことになる」。実際ジンバルドーは看守役に警棒を持たせた。これは看守役に暴力を手段として捉えさせるには十分だったのではないかと指摘されている。
従来言われている通りに自然とそうなったにしても安心できる材料は欠片もない。刻一刻と雰囲気は悪くなっていったことになっているのだから。つか最終的に暴力あったって話なんですがそれは。
現状で伝えられている監獄実験中止の経緯は、以下だ。
- 実際の監獄に出入りしている牧師に監獄実験の囚人役の様子を見てもらう
- 「囚人役たちの状態が実際の監獄に入れられた囚人と同じすぎる」として牧師が囚人役の家族に連絡
- 家族が弁護士引き連れて中止を訴える
- 「話が違う」と実験を続けたがる看守たちを抑えて実験中止。
流石にここまで仕込みや嘘だったらもう白旗だが、とりあえず事実だったとしよう。そうなると、ダグラス・コルピの語った状況・心境は「穏やかすぎる」。
私には彼の言い分は「そういうこととして片付けたい/既にそういうこととして整理している」ように見える。これがなんというか…、一部のサバイバーと言うか虐待経験者というか、そういったものに似ているように見える。「なんてことはなかった」と。自分に言い聞かせるかのような。
本来はそういう過去の片付け方をしても他人に非難される筋合いもないことは言っておく。こういうのだって「整理の仕方」の一つだ。
今回の場合「実験の正当性」に関わる点となってしまったからあれなだけだ。なんというか、真実が何処にあるにせよ、どのみち災難だったねという感想。そっとしておいて差し上げろ。
◆個人的には
注目すべきは、「人間に残虐性が元からある」という点だけはこの実験で証明できる余地は完全に潰れたことか。思いっきり指示しまくってるからこの実験に於いて「自然発生」は主張できない。
ジンバルドー自身は「研究者」としては疑われる立場になったのは間違いないようだ。まぁ彼のTED動画みたけどね。超早口だったからね。せっかちだったのかも知れんね。
環境/役割が人を作る、変える、これ自体は間違いないとは思うが。
カサンドラ症候群でアスペルガー障害のような思考・言動になる可能性や
PACモデルの様に「相手に対応した人格面が引き出される/強化される」ことは事実としてある。
監獄実験の場合、意図的にゴールを目指したことが判明し、ジンバルドーが主張していた「これが人間の特性だ」的な部分がこの研究結果に於いては全部正当性を失った。だが、似たような状況が世界で「自然発生」しているのもまた事実だろう。
どの道「仕込めば」、「こうなる」点には変わりはないわけで。本質云々より唆しや誘惑に弱いのかも知れんな、人間。性悪説というよりは、付和雷同というか。
この実験特有のものがあるとしたら、再現するとしたら「サクラ」が必要なことが判明したくらいか。実社会に於いてはサクラ役は自然発生する。あと天然のサクラ役がいる。意味は、まぁそのうち。
ジンバルドーがTEDで語った「腐っているのはリンゴではなく、樽なのです」というのは、間違ってはいないと思う。まぁリンゴが腐ってる場合もある。腐った樽の中で順調に腐ったリンゴが、綺麗な樽の中に入り込むこともある。
ちなみにミルグラム実験は「権力者からの指示」に従うよう強制される内、感覚が麻痺して言いなりになってくるというもの。こちらも「非個人化」を促進させるとされた。ジンバルドーやアシスタントが看守役にやったことが、結果的にこれに当たる。
ミルグラム実験では「電流を他人に流す」指示を出し続けられ、最終的には多くの人間がするようになり、「死を連想させる強さ」の電流が流されるに至る。こちらはちゃんと再現性がある。まぁ電流流されてる演技してる映像と声が流れるだけだから安心だね。
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