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期待通りに育つ ピグマリオン効果

期待通りに育つ ピグマリオン効果

§目次
■ピグマリオン効果とは
■ゴーレム効果
■動物でのピグマリオン効果
■ピグマリオン効果の反対意見
■自己イメージ
■「他人の期待」に性格・能力を決められるのか
■役割に準じる心理
 







■ピグマリオン効果とは

・概要としては「教師が『この子は将来成績が上がる』と認識した子供の成績が上がった」という話。
 
別名「教師期待効果」、あるいは実験者の名前からローゼンタール効果。
 
・小学校である実験が行われた。
 
1.学期の最初に「特別なテスト」を実施する。これはその後の成績が伸びる可能性が高い生徒を発見するもの。
 
2.テストの結果から得られた「成績が伸びる可能性が高い生徒」を担任教師に教える。
 
3.8ヶ月後にチェックした際、「テストの結果通りに」その子どもたちの成績が伸びていた。
 
4.実は「特別なテスト」なんてものはなく、「成績が伸びる生徒」は無作為に選ばれただけだった。そしてそれを教えられたのは生徒本人ではなく教師のみ。
 
5.つまるところ「教師の生徒に対する期待」が生徒の成績を伸ばした、という話。
 

■ゴーレム効果

・ピグマリオン効果の反対。期待されないことで成績が下がることを指す。wikiによればピグマリオン効果との心理的な因果関係はなし、とされているが、どうかな。
 
・http://www.aand.co.jp/words/cat123/post-314.htmlによれば、ピグマリオンの対として考えられたとされている。研究はされていない? まぁ、人間相手に表立ってやるわけにはいかないだろう。教師が生徒をイジメるだけになるし。
 
・だが、もしもその教師に嫌われたり、馬鹿扱いされたとしたら、その子供はその教科の成績が伸びる余地があるだろうか?
 
子供の「嫌いな科目」の正体が、担当教師だったりすることは多い。教師が嫌い=教科が嫌い。これ自体がゴーレム効果ではないのか。交流のある人間を嫌いになる理由は大半が「自分を否定したから」だろう。
 
・発達障害の子供。親がその障害に対して悲観的な場合、将来的な能力が低いという話がある。
 
・認知症初期の老人。認知症として扱うとどんどんボケていくという話。
 
・母親が周囲のイメージする「母親像」に押しつぶされている話は枚挙にいとまがないだろう。
 




■動物でのピグマリオン効果

・そもそもピグマリオン効果を思いついたのは動物を使って実験したことかららしい。
 
ネズミを使った迷路実験の際、学生にそれぞれ「これは利口なネズミだ」「これはのろまなネズミだ」と言って渡した所、前者の成績は良く、後者は悪かったそうだ。
 
・注目するべきは
1.ネズミに本来差異はない点 
2.差異は「ネズミを扱う学生のネズミに対しての認識」にある点。
3.学生のネズミの扱いが実際に違った、という点。
 
・つまり教師などの影響力が高い者が対象にどう接するかが成績に影響するということ。生徒やネズミは「扱われた通り」の結果を出したことになる。
 
・整理してみると、
ローゼンタール→教師「あのこは成績が上がる」
教師→生徒「この子は成績が上がるから」という理由で注目する。
=生徒の成績は上がる。
 
という流れで動いている。
 

■ピグマリオン効果の反対意見

・どうも「反対意見」を見るに、期待の生徒とそうじゃない生徒で教師の扱いが違う可能性はスルーされているように見える。ローゼンタールの主な主張がピグマリオン効果が「【期待だけ】で成績が上がった」としたがっている印象は受ける。期待されていることを生徒が察知→やる気が出る→成績が上がる、というシンプルな構図だ。
 
・wikiに掲載されている反対意見としては、
1.「成績が上がる子供のリスト(嘘)」を教師は一度流し見しただけだった
2.成績が上がる子供(嘘)の名前を教師が覚えていないケースでは再現されなかった
3.生徒の成績が全て教師依存として捉えていないかという指摘※1
4.単純にその生徒ばっかり教師が依怙贔屓したんじゃないのかという指摘※2
 
とする点が挙がっている。
 
また、八ヶ月後の再テストだけなのかどうかは知らんが「途中経過」が見えないのでなんとも言えない。その八ヶ月の間に教師が対象と接する時間は多かったのかどうか。本気で探るなら8ヶ月間教師が生徒に接した回数、内容、扱いの差異なども調べるべきだがやってないだろう。やりたくもないだろうが。
 
尤も、再実験などでも効果が見えるケースもしているので完全に眉唾ではないとは思う。ただしその「理由」が確定しているかというと、怪しい。
 
※1 子供の自主的な努力を織り込んでいないのではないかということ
※2 教師自身の評価基準は知らないが、成績優秀な生徒がクラスに居ることは自分の評価に繋がることは想像に難くない。要するに「労力を割くなら対象の生徒のほうがメリットが大きい」と思わせるには十分な状況だろう。ただ、贔屓すれば成績が上がるというのなら可能性自体は誰にでもあるということでもある。
 
・面白いのが、ローゼンタール本人の論文らしいが教師の持つ事前の生徒の情報量による差異だ。
 
対象の生徒と二週間以上の付き合いの有無
・ない場合には効果が91%
・ある場合には効果が12%
 
効果がでかすぎる。都合のいい部分だけピックアップした研究者バイアスの疑いはあるだろう。
 
ともかく、これを信じるなら「生徒のことを知っていると効果が弱まる」ことになる。これは教師がその生徒との距離感や付き合い方、可能性を無意識にでも「暫定する前か後か」で左右されているということではないだろうか。
 
ローゼンタール「あの子は成績が上がるよ」
教師「ないない」
 
・主張はともかく、一般でピグマリオン効果と言われて想像するのは元から「子供をその気にさせる」程度の認識だろう。だから元から問題ないと思われる。どちらかと言えばゲーミフィケーションに近いが。
 




■自己イメージ

・正直「ピグマリオン効果」は主張と発表内容を見比べるにガバい。まぁその点はどうでもいいんだ。個人的には研究の質と主張に突っ込みどころがあるだけで(ほとんど全部じゃねーか)効果そのものは実際にあると捉えている。
 
・ピグマリオン効果の本質は「教師が生徒をどう扱ったか」からの生徒自身の変化だと考える。扱われる生徒も、自己イメージを「扱われ方」から再構築していくだろう。こう扱われるのだから自分はこうなのだ、と。
 
つまり最終的には「自己認識」の違いが成績の差異となったのではないか※1。表向きは「公平な扱い」だったとしても、人間はメタメッセージが読める。
 
※1:もちろん教師が対象に接する時間が他と比べて「自然と」増える点もあるだろう。
 
・予言の自己成就と同系統だと思う。イメージ、予想に引っ張られて言動が変化した。
 

■「他人の期待」に性格・能力を決められるのか

・ピグマリオン効果とは、「他者からの扱い」から得た情報からの「本人の自己イメージの構築/再構築」と、実際に教師が熱心になった(あるいは意識した)結果との和だと思う。
 
・さてまぁ、部下育成や子供の教育でよく言われるピグマリオン効果なわけだが、悪いがそっちはどうでもいい。他人を操作しようってのがそもそも嫌いだし、その必要性があるケースは認めるが取り扱いたくない。他にいくらでも取り扱っているだろうからそっちに行けばいいだろう。オカルトに頼る前に勉強見てやればいいだろうがとは思うが。
 
・他人との関わりはどんな生き方をするにしてもある。そして相手に「どう見られているか」は気にすることになる。これはストロークを感知する能力/メタメッセージを読む能力が人間にある限り、「嫌でもわかること」「気にしたくないのに気になること」だろう。これらの能力がないならないでズタボロになるだろうが。
 
要するに、私たちはピグマリオン/ゴーレム効果の影響下に常にある。既に。自然と出来上がった自己イメージ自体がこれらの影響を受けているはずだ。「誰かから見た自分」に。
 
・こちらの期待通りに相手がイメージを持ってくれるとは限らない。心の機微が「わかりすぎる」人間、あるいはそういった状態であるほど人を避ける傾向が強まるのも偶然ではないだろう。
 
都合の良いイメージを持ってくれと要求するのもおかしいし、理不尽に影響を受けることを織り込んだその上で、自分はどうありたいのか/どうなりたいのかは意識し続けないと流されるのではないか。
 




■役割に準じる心理

ミルグラム実験やスタンフォードの監獄実験※1のように、人間には「与えられた役割に準じる/殉じる心理」がある。
 
この2つの実験は、「普段のその者がどういった人間かは関係なく」状況・環境の影響で残虐になる傾向があったということだった。ミルグラムの方は電流を流す指示を拒否するなど結構良心的な者もいたようだが、スタンフォードの方でそれが見られなかったのは「個人」か「集団」かの違いだろう。つまり日頃は集団生活が常である人間は…。
 
これになぞらえて言えば、ピグマリオン効果の対象は「秀才として扱われたから秀才を演じた」ことになる。恐らく「空気」を読み取って、「自分の可能性」あるいは「未来の自分像」を構築し、その通りになるために自主的に勉強をしたり、関心を持ったりしたのだろう。
 
まぁ、やることやったんだから成績は上がるさ。要するに、子供の成績が上がった事自体はそれほど不思議ではない。関心を持って勉強したから。加えてバックアップもあった。理想的な環境だね。以上。
 
注目するべきはそれが自発的に行われた「環境」の構築にある。そしてピグマリオン効果の場合、それが「他人がそれを信じて、そう振る舞ったから」となる。影響力の強い人間がそう信じているのだから、自分はそうなのだ、と。
 
・利用するとしたら、この「環境」の構築の部分だろう。現状の能力ではなく成長できる確信※2、バックアップあるいはサポート環境、動機・理由ってところだろうか。
 
※1:スタンフォード大学で行われたフィリップ・ジンバルドーの心理学実験。囚人役、看守役に分かれて監獄生活を「演じる」。これは「肩書でその者の行動は変わる」ことの証明を目的としたものだった。
 
新聞広告で募集し、集まったのは学生を含む一般人21人。11人が看守役、10人が囚人役としてこの実験は行われた。日が経つに連れて看守役はより「看守らしく」、囚人役はより「囚人らしく」振る舞うようになった。
 
最終的には虐待に近い状態になり、禁止されていた暴力すら散見されるようになり、予定を切り上げてわずか六日間で実験が中止された。
 
この経緯もかなり特殊で、実際の刑務所でカウンセリングをしている牧師に囚人役を見せた所、「状態が実際の囚人と同じすぎる」として実験を非難。ジンバルドーは実験を継続したため牧師が家族へ連絡、家族は弁護士を伴って実験の中止を要請、協議を経てようやく中止、と言った流れだった。
気づいたかもしれないが、ジンバルドー自身がこの空気に「飲まれて」おり、後日そのことを認めている。
 
看守役達は予定の期間より短いことに不満を唱えたそうだ。「話が違う」、と。
 
この六日間で精神を錯乱させた囚人役二名が離脱。残された囚人役たちは「離脱した奴らがここを襲撃してくれる」と願望を抱いていたそうだ。実験終了後の囚人役のカウンセリングは10年間続いたそうな。
 
要するに、「たった6日で地獄が出来た」。しかも一般人が作り上げた。ノリノリでね。
 
※2 これを他人がサポートするとしたらアドラーの勇気づけが近いか?
 




■メモ

・ピグマリオンの名はいつも通りギリシャ神話から。幾つか細部が違うパターンが見られるが、大体の流れは以下。
 
1.リアル女の嫌なところばっかり見て女嫌いになったキュプロスの王ピグマリオンは「絶対結婚しない」と誓っておりました。
 
2.それでも理想の女性像というのものは持っており、彫刻スキルもあったことから理想の女性を彫刻しました(裸婦像)。
 
3.見ているうちに裸なのが恥ずかしく思えてきて、服を彫ってやり、アクセサリーを彫ってやりとしている間に、ガチで惚れてきました。
 
4.愛が高じて毎日食事の用意をしたり、話しかけたりしました。いつしか「彼女」が人間になるように祈るようになりました。
 
5.「彼女」から離れられなくなり、衰弱しているピグマリオンを見かねた女神アフロディテがその願いを聞き入れ、彫像に生命を与えました。
 
6.ガラテアと名づけられた「彼女」と結ばれたピグマリオンは幸せに暮らしましたとさ。
 
つまり神話時代のフィギュアフェチ(リア充)。
 
一説に拠るとガラテアのモデルがアフロディテであり、「私に似てるんだったらしょうがない」という理由だったとかなんとか。まぁ美の女神だからね。
 
ピグマリオンコンプレックスは和製英語で、英語ではスタチューフィリア(Statuephilia)だそうな。
 
ちなみに「フィリア」と付けば偏愛症、「フォビア」とつけば恐怖症。ググって精神的ダメージを受けやすいのはフィリアの方が多かったりする。世の中広い。
 
・ピグマリオン効果はプラス効果として見ればそうでもないが、マイナス効果の心当たりを考えるに枚挙に暇がない事だろう。責任転嫁の可能性ももちろんあるのだが。
 
これが避けられないものならば「耐性」を付ける方向で考える必要がある。あるいは中和。つまりは自分を取り戻すことを。
 
・友人はよく選べってのは至言なんだろう。親と教師は選べないからなぁ。
 

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