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・「片付けられない」「汚部屋」「ゴミ屋敷」。テレビでもそんな芸能人や一般人を取り上げた番組がたまにやったりするが、なんというか悲鳴が上がるレベルだったりする。
・また、隣近所にゴミ屋敷があったりするとネズミを始めとした害獣、Gやハエなどの害虫や悪臭などの実害がある。
・そんな部屋/家で平気で暮らしていける彼らは、ぶっちゃけて「まとも」なのだろうか。
それとも、「やはりどっかおかしかったのか」と納得できるような異常がなにかあるのだろうか。
■目次
■「溜め込み症」
■強迫性貯蔵症/強迫的ホーディング/ホーディング障害
■ホーディングの種類
■セルフネグレクト
■うつ病
■統合失調症
■ADHD(注意欠陥多動症)またはADD
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「溜め込み症」
・自分の持ち物を捨てる時に(たとえゴミでも)異常な抵抗を示し、使わない物やゴミが貯まる一方。
ひどい場合ではわざわざゴミを拾ってきてまで溜め込む。こういった症状は「ホーディング(hoarding)」と呼ばれている。日本では「溜め込み症」と訳されることが多い。
強迫性貯蔵症/強迫的ホーディング/ホーディング障害
強迫性障害(OCD)の者の行動として異常な蒐集に走るケースがある。
・蛇足になりそうだが一応言っておくと、「脅迫」ではなくて「強迫」である。
自分自身で「これはこうじゃなきゃならない/こうしなきゃならない」と強く思い込んでいる状態。
結構身近なものかもね。
・強迫的ホーディングは2013年にDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)に追加された。
現状では、「精神疾患」と「強迫性障害」の両方として扱われるらしい。
・注目に値するべきは、2~5%の成人がコレだと推定されている点だ。100人の人間がいたら最悪20人近くがゴミ屋敷の主人となり得ることになる。
後述するが、「素質」は誰もが持っているものだ。
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・強迫的ホーディングの診断基準は以下
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診断基準はDSM-5にて定義されている[14][15]。
物の価値に関係なく、捨てる・手放すことが困難であるという考えにとらわれる。
1.の困難さは、物を蒐集することの必要性の認識あるいは物を捨てることに関連した苦痛が原因となっている。
捨てることが困難であるが故、生活・活動の領域にまで物が溢れるほど蒐集が進み、本来の生活が困難になるまでに至る。生活領域を散らかさない様にするには、家族や清掃業者・公共機関など第三者の介入が不可欠となる。
蒐集行為が、臨床的に重大な苦痛と社会的・職業的その他重要な分野での機能に支障を来すまでになる(自分ないし他人への安全な環境の維持を含む)。
脳挫傷・脳血管障害によるものではない。
蒐集行為によって、別の精神疾患(統合失調症・自閉症スペクトラム・認知症・うつ)を引き起こすことがある。
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要約すると、
1.客観的な価値に関係なく(要するに人から見たらゴミでも)「捨てられない」。
2.これにより集まった「物」の整理、管理は自力ではできていない。
3.これにより他人が介入しなければ成り立たないほどに日常に支障が出ている。
4.これにより他人が相当迷惑している(実害、及びその可能性)。
とまぁこの辺りが基準であると共にホーディングの特徴でもあるようだ。
「別の精神疾患を引き起こす」と言う部分についてだが、逆に統合失調症、アスペルガー障害や
ADHD/ADD、認知症、うつ病が「原因で」ホーディングを行うとする例もある。
・一方、正反対の「潔癖症」も強迫性障害である。まぁ限度を知らないのは全部病気なのかもしれない。
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ホーディングの対象の種類
・相当多岐にわたるようだ。対象は特に問わないのだろうか。
一応言っておくと、DSM上のホーディングは、「集めるくせに管理できずに破綻している」状態を指すと思っておいたほうがいい。
要するに、整理整頓やらメンテナンスやらをちゃんとして管理できている「コレクター」は違う。自称コレクターのホーディングは沢山いるかもしれないが。
・ビブリオマニア(本)
コレクターとは違い、やっぱり「無価値な」点に拘り、蒐集する。
代表的な例が、「本を版数毎に所有する」というパターンらしい。
初版、第二版、第三版、第四版……と同じ本を集め続けるということ。
・多頭飼い(動物)
強迫的ホーディングとしては多頭飼いの上で世話をしきれていない状態。
ニュースで時々こういう話は出るんだが、見たことないだろうか。
- 大抵中年あるいは老人の一人暮らしか老夫婦で、
- 犬か猫、特に犬を異常な数飼っていて、
- 世話を満足にできていないから(本人は否定する)犬はガリガリに痩せていて、
- 糞による悪臭や吠え声による騒音のせいで近隣住民から市役所へ苦情が行って、
- 職員が説得しに行ったら罵声を浴びせたり怒鳴ったりする。
と言う一連の流れがセットなニュース。
まぁ…、あんまり関係ないけどつがいで飼う時は気をつけようね。
特にハムスターはつがいで飼ってはいけない。「ねずみ算」という言葉を身をもって知ることになるだろう。
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・デジタルホーディング(データ)
「本人にとって価値が無いのに電子データを過度に蒐集、そして消せない」と言う状態を指す。
「データ」の内容は、
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ブラウザーのタブ
過度なデスクトップアイコン
デジタル写真
古いドキュメント
電子ファイルフォルダ
メールボックスの受信トレイ
もはや参照していないインターネット・ブックマーク
音楽、動画ファイル
もはや使用していない、古いソフトウェア、プログラム、アプリ
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デジタルの場合、データそのものは経年劣化はない。まぁディスクが壊れればまるごとお陀仏なんだが(バックアップは取ろう)。
つまり意識的に管理しているか、整理しているかが如実に現れる。
ビブリオマニアや多頭飼いじゃなくても、
ダウンロードフォルダの容量が数ギガだとか、
デスクトップがアイコンで埋まっているとか、
Chromeのタブの数が尋常じゃないとかだと、
まぁ、ヤバイかもしれない。
この中でも「写真」と「メール」は特に溜まりやすいかもしれない。基本的に数は増える一方だろう。別にそれはいい。
要点は、取捨選択が出来るかどうかになる。「いらないものを捨てれるかどうか」。
だがホーディングは他人からはどう見ても不要でも本人にとっては捨てられないという症状だ。自己分析がかなりやりづらい。
彼らの「捨てられない理由」も馬鹿馬鹿しいことが多いが、まさに「強迫観念」と言った感じで意見を変えることもない。
恐らく「捨てなくていい理由」を自前で捏造し、保存し続けるだろう。
まぁ、少しは客観的に見てどういう状態化を気にした方がいいだろう。まともな自信があっても。
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セルフネグレクト
・ホーディングの理由として言われている内の一つがセルフ・ネグレクトである。
セルフは自己、自分。
ネグレクトは無視、怠ること、育児放棄などを指す。
要するに、自己への怠慢。
特徴としては、何事も投げやりになる。自分の欲求も満たそうとしない。頑固。などがある。
これだけ聞くと大した事なさそうだが、レベルが違う。
調べていたら二年間風呂に入らなかったゴミ屋敷の住人とかいたらしい。恐らく外国だが、背中や腹がホクロのような真っ黒のかなり大きな斑点で覆われていた。一見すると皮膚病のような。
だが血液検査では特に以上がなかったらしい。抗生物質塗って清潔にしてただけで治ったのだとか。
逆を言えば「不潔」と言うただそれだけでそんな状況になったのだが、それでも本人はなんとかしようとは思わなかったようだ。
汚部屋やゴミ屋敷以外で顕著なのが清潔、栄養、つまりは「健康」に全く気を使わない点だ。
3食インスタントとか(むしろ食事を取らないとか)、入浴や歯磨きをサボりがちだとか、片付けや掃除にとどまらなく自分のことを気にしない。
先程の風呂嫌いのように明らかに身体に異常があっても医者にはいかないことも多い。
・また、殆どのゴミ屋敷で問題となっているのだが、支援を拒否することが非常に多い。これもセルフネグレクトの特徴とされている。
つまり「人間不信」、または「人と関わりたくない」傾向が強い。
彼らからしてみれば「人間」は自分だけで、他人は全部「敵」なのかもしれない。
実際にホーディング(OCDとも言う)は不安症の一種と分類されることもあり、彼らは「不安だから」物を買い込んだり、わざわざ拾ってきたりして「溜め込む」のだと説明されることもある。
拾ってきたものをまるで「バリケード」のような積み方をするゴミ屋敷住人もいるね。
誰にでもあるホーディングの「種」
・身近な例で言えば「老後が不安だから貯金する」というのがある。こう言えば溜め込むという行為の「種」は誰にでもあるのが分かるだろう。
じゃあ貯金は後ろ向きだろうか。未来のために今我慢する、と言えば前向きではないだろうか。
ホーディングの問題点とは、それらを集めることで何も解決しないどころか自分の首を絞めているということだ。周囲とは対立するか、孤立するかだからだ。
孤独
・当然というか、必然というか、近所付き合いを始めとして人間関係的に孤立している事が多い。
セルフ・ネグレクトは高齢者に多い。孤独死が年に2万人程、そのうち八割はセルフ・ネグレクトが原因と言われている。最近は若者も中年にも増えてきたらしいが。
こうなる原因は対人関係のトラブル、震災被害者、認知症、アルコール依存など多岐にわたるが、概して本人が自分自身に対して(あるいは人生に対して)何かしら「諦めている」ように見える。
・ホーディングを中心に見てみれば、セルフ・ネグレクトはゴミ屋敷を作る上での「下地」になり得る。
生きてる限り新陳代謝は止まらない。腹は嫌でも減ってくる。
餓えは通常、常人には耐えられない苦しみをもたらす。遭難して、空腹に耐えきれなくて、人を食ったと言う話もあるくらいだ。
だから例え人生に絶望して、要するに生きていたくなかったのだとしても、食事は取るだろう。そうすればゴミが出る。セルフ・ネグレクトの精神状況で片付ける必要性を感じるだろうか。
日数の経過に比例して、確実にゴミは増えていくだろう。
そうだとすると、パラダイム(価値基準)が近隣住民とは違うということになる。この場合のホーディングは恐らくゴミをゴミだと思っていない。目に入ってもいないんじゃないのか。
つまり自分の問題であり、だからこそ「無関心である」ことで「対処」をしている。彼らの中ではこれで完結している。
自分は困っていないし、縁もゆかりもないどころか恐らく仮想敵である「他人」が、「自分のテリトリーを侵略しに来る」、と見えているのなら、「支援」への抵抗もまぁ納得も行くか。
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うつ病
・セルフ・ネグレクトと似たような状態になる。
・部屋の状態や自身の健康などに関心が持てない。
・問題だと思っていたとしても、対処する気力がわかない。
統合失調症
・統合失調症と併発するケースが有る。
・統合失調症の症状には陽性と陰性がある。
・陽性としては幻聴、妄想、感情が不安定、思考がまとまらないなど。
・陰性は無気力、疲労感、仕事や家事の段取りができない、集中力、注意力、決断力の不足がある。
・陽性の幻聴だが、これは大抵「悪口」や「命令」が聞こえるらしい。大抵不快な内容の。
頭の中の「悪意を持った誰か」がわざと嫌われるようなことを「命令する」のだろうか。
・妄想は被害妄想が主だが、何を見ても「これは自分には関係があることだ」と感じる症状もあるようだ。
ホーディングの例として、まぁ詳しく書くのは止めておくがとんでもないものを集めまくった中年女性の例を読んだ。
「それ」を集めた理由が「汚れの形が見事な左右対称で、今拾わなくては二度と出会えないと思った」のだとか。
「それ」は100人が100人ともゴミだと認識するものだ。気付かず触れてしまったら悲鳴を上げてぶん投げるような代物だ。
この女性はホーディングが酷くて入院していて、その院内で「コレクション」をしていたわけだが、この「二度と出会えないと思った」というのの更に強いのが妄想だとしたらすごいな。
・陰性の無気力や疲労感はうつ病のそれと、ひいてはセルフ・ネグレクトのそれと共通している。問題を感じていても、対処する活力が足りてないことになる。
・加えて「決断力」が不足しているのが問題になるだろう。捨てるためには「決断」しなくてはならない。
ADHD(注意欠陥多動症)またはADD
・ADHDは注意欠陥多動症。特定の1つに集中し続けることができない、衝動的/感情的などの症状がある。
・ADDは「多動」の症状がなくなったか、落ち着いてきた状態。だが注意力不足が残っているのでミスなどが多く、社会で苦労するケースが多い。
どちらも片付けの途中でほったらかしてそのまま忘れるということが多い。
・ADHDはアスペルガー障害とひっくるめて見られることもあるが、厳密には違う。
特定の何かにだけ異常な集中力を見せるのはADHDと同じだが、アスペルガーの場合は対人関係に特に難がある。
ホーディング中心に見てみれば、こちらもまた重症化しやすい要素は持っているとは言える。
こちらは物に対しての執着が強い傾向があり、捨てることを嫌がる傾向がある。これはホーディングの代表的な症状そのものだ。
ただ、本人にとってはどこに何があるのかはわかっている「意味のある配列」であることが多いそうだ。
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ホーディングの「素質」は早ければ十代の時点で見られるらしい。
また、被虐待者がホーディングになりやすい傾向があるとの話もある。
これらに加えて特に高齢に依る認知能力の低下で種が「開花」するケースが多い。
客観的に見れば確実に異常な行為であり、実際に病気や異常を持っていることもあるし、ホーディングが原因で異常が現れることもある。
最大の問題は「本人には解決する意志、または気力、あるいは能力がない」点になる。時間で解決する問題ではないだろう。
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