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■目次
■アスペルガー障害とは
■ギフテッド
■自閉症スペクトラム
■「自分のため」なら理解できる
■何が悪いのかわからない
■責任の所在
■やろうと思えば出来る
■外面は取り繕える
■アスペルガー障害とのコミュニケーション
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■アスペルガー障害とは
アスペルガー障害は「知的障害のない自閉症」と称される。「アスペルガー」の名は発見者であるハンス・アスペルガーから。
ネットスラングとしては「アスペ」と略される。
後述するが、「障害」と呼んでいいかどうかの時点で意見が別れている。
興味を向けることや共感することについての能力が普通とは違う。
何らかのものに異常な関心/拘りを示したり、共感能力が乏しいためにコミュニケーションにおいて問題が起こりやすい。
簡単に言うと「人の気持ちがわからない」「相手の立場になって考えられない」らしい。
このため、悪気はなくても「とんでもないこと」を言ったりやったりする可能性がある。
・サリー、アン課題というものがある。以下のような文章問題。
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サリーが自分の好きなビー玉をかごに入れて外に遊びに行きました。
アンはサリーのビー玉をかごからだして、横の箱に隠しました。
サリーが外から帰ってきて、ビー玉で遊ぼうとしました。
さて、サリーはどこを探そうとするでしょうか。
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バリエーションはいくつか在るようだが、自閉症スペクトラムの子供の場合、正解を聞いても理解ができないらしい。前述の通り、「他人の視点」という概念を使って考えるのが苦手だからだ。
流石に大人ではわからないということはないだろうが、苦手なのには変わりはない。
・アスペルガー障害については「子供の発達障害」として長年扱われてきた。実は大人でもかなりの数がいることがわかったのが最近であり、
大人のADHDもそうだが「大人の発達障害」についての研究はあまり進んでいない。
議論は盛んであり、障害じゃないから症候群と呼べだとか、症候群とも呼ぶなとか。そもそも「治療対象」ではないとの意見もある。
■ギフテッド
それどころか、「ギフテッド(持って生まれた才能)」だと主張する者たちもいる。
ギフテッドは二種類あり、一つは飛び級をするような全体的な知能が高い子供。
もう一つが「アレはできないけどコレは人よりも得意」という能力の凹凸があるタイプ。
彼らの主張するギフテッドは後者を指すのだろう。
関心を持ったことに異様な集中力を発揮し、言葉通り寝食を忘れ、時にはトイレにいくことも忘れたりするようだ。
問題は集中する対象があんまり自分で選べていないことだが。要するに暴走。
上手いこと「やるべきこと」に集中できれば、成果を出すだろう。
ただ、アスペルガーがギフテッドと主張するのは(恐らく)海外発祥の概念であり、あいつらハーフを「ダブルと呼べ」とか言うようなポジティブさがあるから真に受けないほうがいいだろう。クォーターはどうなるんだ。クアドラブルか。
どの道、自他共に悩みのタネは能力の凹凸の内「凹」の部分だ。「ほとんど普通」だからこそ、違う部分が際立っている印象がある。
要するに、アスペルガー障害は「普通」と「発達障害」の境界線に位置している症状であり、「異常」なのかどうかもグレーゾーンである。
・何れにせよ、一般的な人間とは意志決定や思考の「基準」が違う。このことによるストレスから周囲の人間、特に妻/夫が心身を病むことがある(カサンドラ症候群)。
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■自閉症スペクトラム
・前述のようなゴタゴタから、現代では「自閉症スペクトラム」と呼ばれるのが正式になってきた。スペクトラムは「連続体」の意味。
「アスペルガー」との言葉が使われていた時は症状の定義や命名と言った細分化が進んでいた。
細かく分けすぎた上に実際の症状としては個体差が激しく、複数の症状が併発することが多かった。
要するに細かすぎて不便だったので改めて「自閉症スペクトラム」としてひとまとめにしたらしい。
この流れに「自閉症」と言う言葉も組み込まれたので、病名としては「自閉症」も使われなくなっていくのだとか。
どの道まだ馴染んでいないだろうから、ここでは「アスペルガー」との言葉を使う。
・軽い症例もカウントすれば100人に一人と言われ、男女比は3:1で男性が多い。
パートナーが病むカサンドラ症候群に女性が多いのも自然なことに思える。もちろん男女逆も在り得る。
■「自分のため」なら理解できる
・共感能力の不足のせいで対人関係に不具合が生じやすい。
一例を挙げると職場で「あなたは太っている」と女性にしつこく指摘したりとか。
この場合「相手が傷つくからやってはいけない」と伝えても、「でも本当のことでしょう」と返されるから無駄だとされている。
酷い時には「どれだけ太っているか」のデータまで持ってきて自分の「正しさ」を主張しようとするのだとか。
相手にしてみれば公開処刑だな。パワハラや
モラハラで訴えたら多分勝てるぞ。普通に侮辱罪が通るかな?
じゃあどうすれば止めるのかというと、「そんなこと言ってると出世できないよ」というのが効果的なんだとか。自分が困るから止めるんだそうだ。
まぁこんなんだから「自分のことしか考えてない」と思われるし、この場合は現実にそうだな。
■何が悪いのかわからない
・本質的には障害云々はあまり関係のない話だ。歪んだ正義、腐った権利の話。
障害がなくてもこれらを振りかざして他人を害するものは多い。喫煙所や喫茶店の喫煙席に乗り込んでまで「タバコはやめろ!!」と叫ぶ「普通の人」とかいるらしい。
前述の太ってるかどうかしつこい奴も、ああいうのはいるだろう?
アスペルガー云々はあまり関係なく、
「何で人を傷つけちゃいけないの?」「何でこれで傷つくの?」なんて態度で
しかも「納得しないから改めない」と言い張る人間には近寄らないでもらいたい、というだけの話だろう。
逆を言えば彼らは周りに共感する必要は別にない。「相手に合わせる」だけで済むことなんだが。それもしないとなったら、まぁ印象は悪い。
ただ、彼らは表情を読んだり空気を読んだりがかなり難しいらしい。
他人からは「言われるまで直さない」「言われても直さない」に見えるが、本人からしてみれば「言われるまで気づけない」と言う形なのだろう。その上で「どう直して良いのかわからない」ことも大きいはずだ。
まぁやめろって言われたらやめたほうがいいだろう。とりあえず。
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■責任の所在
・さて、アスペルガー障害の言動は「悪気はない」とは言われている。それは事実かもしれないが、どんな人間だろうが「悪気はない」と「悪くない」は全く違う。
この点について被害者も加害者も分かっていないことが多い。
だからアスペルガー障害や支援者が理解してもらおうと行う主張は
「お前達はやりたい放題にやって、我々はただひたすらに我慢しろというのか!!」
という反発を買う。
「共存」には本人が症状を自覚することが絶対に必要になる。具体的には「責任能力」だ。
自分の言動に対して責任を取るつもりもなく、改めもせず、ましてや気づけない。その上で「悪気はなかったんだから自分は悪くない」と言いはるのなら、一生嫌われるだろう。
なぜなら、責任を取らない/取れないのなら周りの人間からしてみれば「何をするかわからない奴」であり、その上で弱者として振る舞うなら「何をされても我慢しなくてはならない」という認識だからだ。
加えて前述の勘違いがあるので被害者も「悪気がないなら我慢しなきゃいけない」と思いこんでいる。
本人がそうじゃなくても周りの野次馬共が「心の狭いやつだ」と責めるだろう。
認識としては「やられたらおしまい」になる。その上で相手は「いつ何をするかわからない奴だ」、と考えているのなら。
結論として「こっち来んな」になるしかないだろう。
・これは知的障害や精神障害の者たちに対して一般人達が感じている恐怖そのものだ。
実際の統計的には彼らの犯罪率は高くないらしいが(精神障害に限ればむしろ一般人より低い)、問題は犯罪率ではなく、思考回路が違うことによる「何をするかわからない」という(幾らか被害妄想の入った)未知への恐怖、そして「責任の所在」という話だろう。
まぁ、わかんないんだから最大限警戒するのは自然といえる。
前者は啓蒙活動である程度は克服できるかもしれない。だが、後者はどうなのだろう。報道を見ていると、「支援団体」の言い分は、庇うことの一点張りに見える余地がある。これでは後者の不安は助長させることにしかならない。
彼ら自身に「悪いことは悪い」と認める姿勢が求められる。恐らくわかっている人間にはこんなことはわかっているはずだが、妙に「上手く伝わっていない」印象を受ける。
多分障害に対する知識量(
メタ知識)や立ち位置の違いがお互いに分かっていない。
よくよく見れば、支援団体とかが言ってるのは「障害が犯罪を起こさせるわけではない」であって、「障害者が犯罪犯したとしても悪くない」と言ってるわけではないのだろうが、多分これが伝わってない。
・要するに支援団体などからしてみれば、彼ら自身は障害を理解するのに必要な「知識」は持っている。が、それを一般に伝えることができていない。
分かってもらえないから彼らの主張は「分かってくれ・受け入れてくれ」そして特に「誤解しないでくれ」になる。
一方、特に障害のない人間からしてみれば、「何するかわかんない奴らが受け入れやがれと言ってくる」ようにしか見えていない。
加えて「障害」に対する「イメージ」はかなり悪い。特に重犯罪の裁判なんかで「とりあえず」と言わんばかりに弁護士が心神喪失やら精神疾患を主張するのも大きな原因だろう。
弁護士というのは金で雇われた傭兵みたいなもので、刑事裁判に於いては被告を弁護することに全力をつくすのが仕事だ。
心神喪失やら精神疾患を主張するのは「他に言い訳が思いつかない」だけな事が多い気が個人的にはするが。実際殆どの場合は一蹴されている。
まぁ精神鑑定には数ヶ月かかるらしいから、「時間稼ぎ」の意味もあるのかもしれない。
どの道、彼らは彼らでただ仕事をしているだけだろう。
だが、これらを見ていた視聴者達は、「重犯罪者は精神疾患や発達障害の疑いがある」というイメージをほぼ確実に持つ。
ただでさえ「普通の人間」と「犯罪者」は、「全くの別物」で「元から何かが違っていたのだ」、と思い込みたい心理が人間には在る。大抵は普通の人間が犯罪犯すんだが。数も多いしね。
まぁそんなこんなで平行線なんじゃないのか。
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■やろうと思えば出来る
というか、利益になるなら改めることが自力で出来るわけだ。彼らはその「必要性」を感じていないからやらない。これまた誰だってそうな気がするが。
癌になってタバコをやめるとか、糖尿病になってジョギングを始めるとか。良く聞く話だろう。
他人から見たら「そうなる前にやっとけよ」なんだが、本人はそうなるまでは必要性を感じないわけだ。誰にだって当てはまるだろう。人のせい、運のせいにしたりするやつも多いが。
まぁとにかく、問題は「能力」というよりは「認識」の問題に集中している。そうする必要性を感じていない。
「出来るのにやらない」ということ。「困るのが自分じゃない」から。重ねて言うが、人間は大体こんなもんである。
・アスペルガー障害は空気は本当は読めている、人の気持ちはわかっている、その上で汲み取ってやる筋合いはないとか自分の欲求優先で動くから「空気が読めない」と言われるのだ、との説もある。
そういう部分はあるのだろう。ADHD同様、自分の欲求最優先な所はアスペルガーにも在るらしい。
ただ、後述するが相手の表情、仕草などの言外のメッセージを読むのが苦手なのも確からしい。
・ところで、窃視症(盗撮とか)などの、本人が「やりたいこと」が社会的に問題であるケースでは、かなり治療が難しいそうだ。
本人にとってはそれが快感であり、治す必要性を感じないからだ。
ではアスペルガー障害はどうかというと、問題行動については「やりたいからやる」というのも多いが、それ以上に「それが普通だと思ってる」ことが問題なことが多く、まぁその分問題が頻発しやすい。
多分本人が自覚できる「問題」は「やりたいからやった」部分のみであり、それは他人から見たら氷山の一角だったりする。
「普通が異常」という指摘が受け入れられないのが根本的なところだろう。これまた誰だってそうだが。
能力的には不足はないから「外面」を取り繕うことは問題なく出来る。やろうと思えば。
前述の善悪の話ともかぶるが、「明文化されていない概念」を基準として考えるのが苦手なようだ。
だから「犯罪を犯してはいけない」というのは守るだろう。法律というルールが在るから。まぁ普通はそうだが。
だが、前述の例を挙げると「人を傷つけてはいけない」ことは具体的にどうすればいいのかが彼らには難しい。元からそういった「地雷」は人それぞれではある。
つまりは同じことを言ったりやったりしても相手次第でリアクションが違う。同じ相手でも機嫌や予定の有無なんていうタイミングでリアクションが違うだろう。
この「相手やタイミング次第」というのが具体的に「今はどうなのか」が彼らにはわからないようだ。わからないのか、見ようとすらしていないのか、まぁここはそれぞれじゃないだろうか。
結果的に求めたリアクションが得られるまで何度もしつこく同じことをやったり、一度の「成功体験」を引きずって別の者にも同じように振る舞ったりしがちになる。
これまた誰だってやらかしかねない傾向であり、アスペルガーというよりは「空気がよめないやつ」全般に当てはまりそうだが。特殊な異常というよりは「誰もが持ってる部分が極端に凹凸が激しい」のだろう。
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■外面は取り繕える
・前述の通り、社会的な立場、立身出世など、自分にとってやる価値がある限りは変な自己主張をすることなく対応が出来る。
・その分家庭内で「リラックス」するわけで、その余波が配偶者に集中するケースがある。「カサンドラ症候群」と呼ばれるものだ。
アスペルガー障害が男性に多いとされ、必然的にカサンドラ症候群はその妻、つまり女性に多くなる。
夫とのコミュニケーションが成立しないことに依る自分のコミュニケーション能力、
ひいては自分の人間性への自信喪失、
これによる「自分には価値が無い、と異様に自分を低く見る(率先して自己犠牲するような)」態度、
旦那の外面が良いせいで相談できる相手・共感する相手が存在しないという「孤独感」
などがあげられる。
夫にしてみれば、「普通」にしているだけでまさか妻の精神状態がヤバイことになるなんて考えもしないわけだ。
また、妻もアスペルガーに対しての知識がなく、コミュニケーションが成立しないのが「自分が悪いからだ」と考えやすくなる。
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■アスペルガー障害とのコミュニケーション
私達人間のコミュニケーションとは、仕草、表情など「言葉ではないメッセージ」での意思伝達が7割以上だとされている。
アスペルガーの人間はこの7割を汲み取るのが非常に苦手だとされている。
要するに、こちらが「伝わっているだろう」と思っていることは3割しか伝わっていない。
「言わなくても分かるだろう」と思っていることに限ったら一切伝わっていない可能性がある。
幸い彼らは妙に丸暗記が得意な傾向にあるから「言えば分かる」ようだ。というか「伝われば」、か。
・また、一人でいることを好む傾向が強い。他人に合わせるのは彼らにとっては大変だからだ。
仲が良くても時々一人になりたがる、というのは知っておいたほうが良いだろう。
まぁアスペルガーじゃなくてもこういう価値観の人間はいるから、知っておいて損はないはずだ。
荘子は『君子の交わりは淡きこと水の若く、小人の交わりは甘きこと醴の若し。君子は淡くして以て親しみ、小人は甘くして以て絶つ。』と言っている。
徳の高い人間の人付き合いは淡白であり、だからこそ長持ちする。
凡人の人付き合いは甘酒のごとくベッタベタでウザいからすぐに終りが来るんだ、とかそういう意味だ。
多かれ少なかれ、人は相手に合わせて自分を取り繕うものだ。疲れたっておかしくない。ベタベタしたがる凡人のほうがダメなのかもしれない。
・ちなみに注意・指摘などの伝え方だが、「感情を伴わず、無機質に、情報だけを伝える」のを心がけたほうが良いとのこと。
人間誰しも反発心は在るんだが、ADHDやアスペルガーはそれがとりわけ強い傾向にあるらしい。
強い言い方をすると「自分は自由だ」ということの証明としてわざとやらない、あえて逆のことをやるなんてことも無いとも限らない。
どの道我慢が試される。
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