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「自分はすぐに諦める」:ツァイガルニク効果

「自分はいつも失敗し、すぐ諦める」:ツァイガルニク効果


ツァイガルニク効果とは「やり遂げたことよりも諦めた/失敗した事の方がよく覚えている」と言う現象。
ぶっちゃけて言えば人間は後ろ向きが自然体のようだ。

最終更新:2017/05/17 使い道について加筆

§目次

◆失敗を覚えやすく、また思い出しやすい。
◆コミュニケーションに使える?
◆あなたの劣等感を強化し、いつまでも悩ませる。
◆意識的な「中和」が必要か
◆ツァイガルニク効果の利用について







◆失敗を覚えやすく、また思い出しやすい。

リトアニア出身で旧ソビエト連邦の心理学者ブルーマ・ツァイガルニク(1901年11月9日 - 1988年2月24日)が「目標が達成されない行為に関する未完了課題についての記憶は、完了課題についての記憶に比べて想起されやすい」との事実を実験的に示した[1]。
どうもやり遂げたことは「完了したタスク」として何らかの処理がされているようだ。

反対に未完了の場合は「またこれに関した情報が必要になるかもしれない」と覚えているらしい。

「テレビを見ながら勉強すると、脳の変なところに情報が格納されて必要なときに思い出せなくなる」なんて話を聞いたことがある。「完了したタスク」も想起の優先順位が低いところに格納されるのだろうか。

何かを習得しようとした際、失敗した所は意識して改めることが出来る。
だが最初からうまく行った部分は何で出来てるのか良くわからないことがある。
失敗した部分の修正に意識のリソースを割く内にうまく出来てた部分が破綻してくる、なんてこともある。

満足すれば興味を失う、というのもこれに該当する。
映画や小説なんかで「なんかすごかったんだけど細部が思い出せない」と言うのは、実は物語としての完成度が高かった(つまりあなたの満足度が高かった)せいかもしれない。
反対にラストに納得できないと言うのはいつまでも覚えているものだ。

ちなみに未完成の図形と完成された図形の場合だと、未完成の図形は覚えが悪いそうだ。
過程なんてどうでもいい、ということだろうか。






◆コミュニケーションに使える?

さてまぁ、調べてみれば案の定「メールをわざと遅れて返事する」だとか「話を途中でわざと中断する」だとかそんなこんなで恋愛テクだのなんだのという題目付きでツァイガルニク効果が紹介されているようだが。

ハッキリ言っておくが、リスクが高い。
ツァイガルニク効果を利用するのは、ではなく「相手を思い通りにする」と言う動機で利用するのは、だ。

そういった目的で利用する、なんというか「汚い心理学」的な利用の仕方は、知っている人間からしてみればかなり強い嫌悪の対象だ。
「自分を騙そうとした/操ろうとした」ようにしか感じないから。
運よく相手を「騙せた」としても、後から知られることになるだろう。それこそ検索すれば数秒で見つかる。

やるんだったら鼻につかない程度に控えるといい。
ぶっちゃけこういったことをやりすぎてフラれたというのはよくある話だ。
気にし過ぎたらし過ぎたで何もできなくなるんだが。まぁ何事も程度による。

正直、わざわざコミュニケーションのテンポをぶった切る奴なんて好かれないと思う。私は嫌いだ。

◆◆




◆あなたの劣等感を強化し、いつまでも悩ませる。

ツァイガルニク効果は要するに「未消化の情報は頭に残り続けやすい」ということだ。

で、未消化の情報とはほとんどは失敗したこと、間に合わなかったこと、理不尽な目にあったりした「割り切れない」ことだったりする。
つまりは「トラウマ」や「失敗」はいつまでも覚えていたり、時々思い出したりしやすい。

後悔や苦手意識の「種」を育ててしまうシステムは誰もが持っている、ということだ。

また、これは自己認識に影響を与える。
何かやろうとして「失敗が頭をよぎる」のはよく聞く話だろう。
苦手意識と呼べるまでにそれらが強化されれば、あなたはそれが「出来ない人」になる。

◆◆




◆意識的な「中和」が必要か

全体としては、「嫌なことはいつまでも覚えていて、上手く行ったことは忘れる」という傾向が人間にはあるということだ。
厳密に言えば嫌なことではなく途中で終わったこと、やり遂げられなかったことだが。

失敗や挫折、恐怖を忘れる必要はないだろう。基本的にこれらは克服をする必要があったり、避けるよう心がけたりと何らかの「対処」が必要なのだから。
忘れたら全く同じ目に会うことになる。

問題は上手く出来たり、良かった記憶が嫌な記憶は思い出しにくいという点。
これのせいで「自己評価」のバランスが実力と比べてネガティブな方向に傾きやすくなる。

実際に見かけるが、人並み以上にできるのに自己評価が(謙遜ではなくて本気で)低い人というのはいる。
自信がないので積極性もなく、なんというかもったいない。

厳しく自分を見ればいいってものでもない。ケチをつけようと思えばどこまでも出来てキリがなく、永遠に自分で自分を貶めることになりかねない。

必要なのは自己評価のバランス感覚だ。
バランスをとるためには、自分の成功に意識的に目を向ける必要があるかもしれない。

大抵の場合は良いところも悪いところもある。長所を伸ばし、短所は改めればいい。
短所しか見えないなら自信もやる気もそりゃなくなる。何もしたくなくなるほどに。





リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」が正しいのならば、遺伝子や本能は肉体、つまりは「あなた」を乗り捨てるつもりでいるということになる。


ストレスを溜め込んで胃に穴が開こうが、ガンになろうが、夜眠れなかろうが、自己評価が低くて暗い人生を送ろうが、遺伝子や本能からしたら「知ったこっちゃない」ということになる。


加えて医療を始めとした文明は発達し、つまりは人生は長くなった。
もはや本能や遺伝子には「全てを任せる訳にはいかない」。
つまりは意識的にバイアスに対処することは必要だ。
「良かった探し」と言うと煙たがる人もいるだろうが、実際に上手に出来たことや嬉しかったことなどの「実績」には目を向けたほうがいいだろう。





◆ツァイガルニク効果の利用について


前述の通り、ツァイガルニク効果をコミュニケーションで「仕掛ける」のはウザいから止めておいたほうがいい。
これで構築された人間関係は露骨に有利不利が出る。やろうと考えた人は、自分の「支配欲」に気づいたほうがいいだろう。
ぶっちゃけて言えばマウント取ろうとしているのと変わらない。

だが、自分に対してなら有効な使いみちがある。
スイッチが「途中で終わったかどうか」なので利用しやすい。

わざと中断することによって好きなことに飽きるのを防げるし、嫌いな作業に再び取り掛かる際の心理的なハードルを下げることも可能だ。

詳細はこちらで。

◆関連リンク
カテゴリ:心理学

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