マスコミの実名報道と犯人の顔写真がネットに流れることの違い
川崎中1殺害事件では、主犯格の18歳を週刊新潮が実名報道した。
犯人グループについてマスコミが詳細を報道しないことに不満を持っていた人々はこれを賞賛した。
一方、実はネット上には既に犯人探しが行われていた。そして「犯人だ」とする写真や実名の情報も。私もいくつか見たが、その中の一つの情報は正しく今回の主犯格の写真であった。
事件加害者の情報がマスコミより先にネット上に流れることも多くなった。だが拡散が早い分、誤報だった場合に致命的な事態になる。
誤報による被害
ネットで流れた情報が間違いだった場合。とんでもない被害を赤の他人が受けることになる。
マスメディアの場合、こういった思い切ったことをやるときは念入りに調査をするものだが、「ネットでのうわさ話」だとそうとは限らない。
勘違いもそうだが、悪意を持って他人を貶めようとするものもいるだろう。
◆川崎中1殺害事件では、女子中学生が犯人グループの1人だと指摘され、顔写真や名前などがネット上に流れた。
この事件と、その前日に横浜市西区の公園で起きた暴行事件の犯人が同一だと当時思われており、彼女はその両方に無関係だった。だが誤報を信じた人間にはそんなことはわからない。
「私じゃない」と言っても「しらばっくれるな」と返ってくる。
反論したことでエスカレートしたのか、「住所も学校も特定した」といった内容、そして明らかに脅迫と思える内容の書き込みも来るようになった。
中学校の教諭が彼女の様子がおかしいことに気づけ、父親に連絡。父親は警察に相談した。
警察は善処することを約束してくれたが、彼女は人がいる場所に出ることが怖くなってしまったそうだ。
◆お笑いタレントのスマイリーキクチも「勘違い」の被害者だ。
昔、とてもひどい事件があった。その事件もまた加害者も被害者も未成年者の事件。
発覚は1989年。今ですら廃止しろという意見があるのに、今よりも少年法が「甘かった」時代だ。犯人グループが未成年ということで犯人についての情報はだいぶ制限がかかっていた。
週刊文春だけが犯人について実名を報じた。その時「野獣に人権はない」と当時の編集長は語ったそうだ。
この事件、世間ではだいぶ憎まれている。誤報による暴走の背景の一つか。
だいぶ話がそれたが、この事件の犯人の1人と出身地が同じで、元不良という謳い文句で売りだしたとされるスマイリーキクチが、「犯人ではないか」という噂が広まった。
そして中傷する言葉がネット上に流れ始め、だんだんと大きくなっていく。
本人は当初大したことはないと考えていたようだが、噂を本気で信じている人間たちがいることに気づき、襲撃される心配までしていた。当時は知人と飲みに行くことすら避け、身の安全第一にすぐ帰宅していたとか。
その後警察に相談。発端となった少年事件で菊池という名がないことなどが確認され、スマイリーキクチが全くの無関係であることが証明された。
その後どうなったかというと、中傷犯が一斉に検挙された。その数19人。罪の意識は対してなく、「ネットや本に騙された」などと言っていたそうだ。
あくまでも中傷や脅迫で検挙されたことを見失ってはならない。「騙された」ことは言い訳になっていない。
頭の悪い言い訳もあった。「離婚して辛かった。中傷を受けただけのキクチよりも自分のほうが辛い」馬鹿だね。メンタルクリニックへ行け。
検挙された後、「本人に謝罪したい」という者もいたが、実際に謝罪文を送ったものはいなかったという。これについては軽いというか、口だけというか、そんな印象を私は受けるね。
ちなみに19人のうち7人は「起訴できる」と警察が判断して書類送検へ。派遣社員や大学職員、経営者からパートまで様々だったそうな。容疑は名誉毀損あるいは脅迫。
噂を信じ、脅迫した人間について
勘違いしている人間が多いが、ネットの匿名性は錯覚だ。
ネットに繋がるためにはプロバイダー契約しなければならない。もちろん契約時に住所氏名を登録する。ネットを利用するたびプロバイダーにはその情報が残る。
裁判所が違法性を認め、令状を出せばプロバイダー業者は警察にすんなりと情報を提供するはずだ。
「バレなきゃいい」は通用しない。むしろネットのほうが確実に個人が特定できるだろう。
誤報が悪いのはもちろんだが、それが本当かどうか、自分で考えなきゃいけない。
ところで被害者の人権は全く問われないね。顔写真出まくってるのに。
もう一つ懸念すべきこと
和歌山毒物カレー事件の林真須美被告の自宅は、今はない。放火で無くなったという話だ。燃やされる前の家は落書きだらけ。もちろん、どこで調べたのか知らないが、全く無関係の人間がやりたい放題やっていった成れの果てとしてそうなった。
対象が実際に悪人で、犯人だったとしても、住所氏名、そして顔が世間に知れるとこういうことをする者が出てくる。こういった行為を行う者については今回は何も言わない。
今回言いたいのは、対象の判決がまだ出ていない状態でこのようなことが起きた時に「社会的な制裁は既に受けた」として犯人の判決が甘くなる可能性があるということだ。制裁目的ならばこれは逆効果だろう。
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