「怒り」に至るまでに何が起こっているのか?
・怒りにかぎらない、感情が発生するまでの過程。
・何故自分の感情を制御できず、あとで後悔するハメになるのか。
・その原因は対策が可能なモノなのかどうか。
■目次
・ファストアンドスロー
・システム1:ファスト
・システム2:スロー
・システム1とシステム2の流れ
・おさらい
・怒りと「システム」の相関
ファストアンドスロー
・心理学者、行動経済学者であるダニエルカールマンは、『人間はどのようにして意思決定するのか、そして何故度々その判断を間違えるのか』を考察するにおいて、ファスト(早い思考)とスロー(遅い思考)の2つの思考形態が人間にはあるとした。
・彼はファストを『システム1』、スローを『システム2』と呼んだ。この概念の提唱者は別にいるらしいが、まぁ割愛。
システム1 ファスト
・一応言っておくが、1st、First ではなくFast。「手早い」「素早い」などの意味。
・「本能的、反射的な思考」であり、感情を含む。
・あるいは「手慣れたこと」などの”身につけたもの”もここに分類される。要するにパターン化された一連の思考や熟練した手続き記憶などを含める。
・これは
バイアスに近い。思考では間に合わないからとっさに、暫定的な処置をするためのもの。
・システム1は自動的、あるいはほとんど苦もなく作動している。 常に。
システム2 スロー
・理論的な思考、判断力、目的を伴った意志、自制心など。
・意識の内、あなたが「自分」だと認識している部分。
・一般的な人間が
「考える」と聞いてまず思い浮かべるのはシステム2の方だろう。
・難題などを前にした際の頭の状態はもちろんのこと、こちらも普段でも機能している。ただし軽めの運転で。
・システム1が「やらかさないように」検閲をする役割がある。拠って、通常の人間の言動はある程度理性的である。……ある程度。
・システム2の価値基準は本人が受けた教育、本人の体験の蓄積、あるいは知識などから作られている。つまり、個体差がある。システム1にも言えることではあるが。
・システム1と比べて「怠け者」であるとされている。燃費悪いから仕方ないと思うが。
・簡単に言えば靴をはく時に「右からか左から出悩むか?」、 歩く時に「右足からか左足からか」と悩むか? という話。 やってられんだろう。
・「考えすぎることにより、動けなくなる」というのは聞いたことがあると思う。システム2が「働きすぎる」とこうなるので、普段は手抜き状態なのだと思われる。
システム1とシステム2の流れ
・まず「素早く対処する」ためのシステム1が作動する。
・次にシステム2が「問題なくそれを行う」ために検閲する。時にはストップを掛け、時には修正する。
・端的に言えば「衝動」と「理性」。
・他の動物と見比べて考えてみれば、人間だけが大脳新皮質が異様にでかい。これは言語や合理的な分析などを司る。
・人間もまた動物から枝分かれしたものであり、そこから考えればシステム2、つまり合理的な判断力や理性は「後から獲得した能力」であるはずだ。
実際システム1だけで言動を決めるなら人間で言えばキチガイだし、その挙動は動物そのものになるだろう。
・本人にとっての危機的状況(つまり感情的になる状況)ではシステム1が最優先されるのも頷ける。
おさらい
・ぶっちゃけて言えば、意識と無意識だと思っていい。
・簡単に言うと、何かのアクションに対してのリアクションとしてまずシステム1が暫定的な結論を出す。それをシステム2が検閲、修正、時には押さえ込み、「適切な」言動を本人にさせる。
・この適切な言動というものは、あくまでも本人の経験や知識に基づいたものである。「適切な言動」が他人から見てミスであることもあるだろう。
・システム1が正しいとは限らない。本能そのものが人間社会と相容れない部分が多くあるからだ。
世の中には気持ちや感情といったものを「自分の本心である」と盲信する者がいるが、システム1の出した結論が”人間”から見て「せっかちで臆病なポンコツ」である可能性は十分にある。
怒りとシステムの相関
・大前提。「システムを止めることはできない」。多分寝てるときでもノンレム時ならシステム1は動いている(その時見るのが「夢」だ)。
・システム1は「本能」と言ってもいいレベルで思考/意識の根幹にある。次いでシステム2はシステム1に対して連動する。
・感情を発生させるのはシステム1だが、情報に対して作動する順番もシステム2より先だし、厄介なことにこちらの方が優先順位が高い。
・「怒り」を感じた際にシステム2が間に合わずに言動に表してしまうことは多いだろう。
・システム2が怠け者、と言われるのもこのあたりにある。「サボる」というよりは「ぼーっとしてて見逃した」と言う感じだが。
・それ以上に厄介なのは、
システム2はシステム1に加担する傾向があるという点だ。
・システム2はシステム1で発生した衝動/感情の
正当性を「保証」する理屈をひねり出す傾向がある。
・「怒り」で言うなら、システム1の中で怒りの感情が発生し、システム2で「理由」を考えることがあるということ。
・後で後悔するくせに、怒る時は全くブレーキがかからないというのなら、本来システム2が出すGOサインすらシステム1内で勝手に出している可能性がある。
あるいは、システム2の価値観的に「ブレーキをかける必要がない」と認識している。
・いるだろう。「自分はここまで怒っていい」「自分はここまでやっていい」と自他共に言い聞かせる奴が。まぁ本当にその通りかも知れんが、そうじゃない可能性もある。
・
アドラーの目的論に通じるが、まず感情があり、その者が「これが原因だ」と主張しているものは本当は原因ではない、ということはある。
・システム1の誤判断、あるいは1と2の二人が完全にグルになった状態が
認知バイアスであり、つまりは自分自身のやっていることを把握できていないか、自分を完璧に騙している状態。
・これは見方を変えれば「システム1はどうしようもないが、システム2さえしっかりしていれば怒りには対処可能である」ことになる。
■カテゴリ
アンガーマネジメント
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