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『偽りの怒りの理由』:すぐに怒る人

『偽りの怒りの理由』:すぐに怒る人




・「怒りの後の後悔」は、大体は怒りの果てに「自分がやったこと」に対しての後悔だ。


・怒りはエネルギーを生み出し、「普段できないようなこと」をやり遂げたり、やらかしたりもする。だからこそ、管理が必要だ。


・その一環としての根本的な課題。「そもそもその怒りは本当に正しいのか」。


・怒りの感情そのものが間違いである可能性は、実は十分にある。


・つまり怒りの後の後悔は「間違ったことをした」事に拠る。やり過ぎもそう。


・やり方を間違えたならともかく、怒りそのものが間違いで、尚且つその「間違った怒り」が頻発するようなら、ちょっと理解と対策が必要だろう。     



■目次

・一次感情と二次感情
・「代用」としての怒り
・非合理な処理
・表現能力の必要性
・まとめ



一次感情と二次感情



・この概念は、弁証法的行動療法(DBT)の解説書、あるいはアドラー心理学でも扱われているようだが、どちらが出典かこちらでは確認できていない。

・DBTは境界性パーソナリティ障害の治療に特化した認知行動療法。

・ここではアドラー心理学での一次感情と二次感情で話をすすめる。DBTの使われ方はここではちょっと使いにくい。
・多分同じようなもんなんだけど手元のサンプル見る限りはね。

・この概念で「怒り」というものを見てみると、怒りは「二次感情」に当たる。

・一次感情は直感レベルの感情だ。脅威を前にして恐ろしいと思う、失ったことに対して悲しいと思う。そういった「リアクション」。

・あるいは寂しさや悲しみなど。正真正銘の「感じた気持ち」である。

・二次感情は「リアクション」を踏まえた上での「アクション」である。こうしよう、ああしよう。あるいはああしてやろう、こうしてやろう。

・つまりは課題/問題(受け入れがたい目前の現実)に対しての「突発的な」対処法。

・二次感情は野卑で粗暴、あるいは即物的な「目の前にあるものに対する対処」であることが多い。

・基本的に人間がサルだった時代から感情の部分は進化していないと思ったほうがいい。二次感情に「忠実に」従ったとすれば、キチガイかチンピラの評価は免れないだろう。

・めんどくさいことに、一次から二次感情までの一連の流れは全てシステム1で処理される。

システム2、つまりは「あなた」が自分の感情を認識するのは、システム1の出した結論である二次感情である。

・システム2で「再計算/再検討」した結果適切ではないと判断が出た頃には、とっくに何か「やらかしている」可能性もある。

・二次感情は問題に対しての「すげぇ雑な解決法」である可能性をここでは認識されたし。システム1はスピード重視であり、「とりあえずこうしとこう」という方向性が強い。

・どのくらいのスピードかというと理性が追いつかないほどだ。 だから「あとで」後悔することになる。


「代用」としての怒り

・本当の感情は一次感情だ。つまりその人は本当は恐れているかもしれないし、困惑しているのかもしれない。

・ところで、あなたの思い浮かべる「すぐ怒る人」は、多分だけど臆病か自分勝手のどちらかではないか?

・まぁどっちも似たようなもんなんだが。

・臆病な人間は不安になる要素を探して騒ぎ立てるわけだが(つまり神経質)、周囲はそれが懸念材料であることにはまず同意しない。これはコアビリーブ(その人間の価値観の核、「こうであるべき」という自分ルール)が環境に適応できていない状態だ。

・周りが思い通りにならない、あるいは同意を得られないことに対する認知的不協和、要するに「なんとかしなきゃいけないのにどうしたら良いかわからないし誰も協力しない理解しない」という混乱がそもそもの感情だ。怒りではなく。

・自分勝手な人間も同様に、「自分の思い通りになるべきなのにならない」という認知的不協和、やはり混乱がまずある。

・どちらの場合も、「他人を動かすための手段」として怒りという表現方法を多用する傾向が強い。

・どの道、自分勝手な人間が「思い通りにならないと不機嫌になる/怒る」のはこういうことである。

・ちなみにアドラー心理学では怒りは「最も対人関係の要素が強い感情」とされている。確信犯であるようなら諭すのは無駄だろう。この手のタイプは治らない。

・思い出してもらいたいのが、認識できるのは二次感情であるという点だ。システム2である「私達」が一次感情を知るためには、自分の感情を含む状況の分析を通じて怒りを「逆算」する必要がある。そうしない限り真の解決にはならない。 






非合理な処理


・人間には「闘争か逃走か反応」と呼ばれる現象が起きる。シャレかよと思ったあなたは大体合ってる。英語で「FIGHT OR FLIGHT」だから初めからシャレだわこれ。

・脅威を感じた際、一目散に逃げるか、抗戦するかを「瞬時に決める」反応だ。

・この際アドレナリンやコルチゾールが大量に分泌され、まぁ簡単に言えば興奮状態にある。

・この反応は脅威を認識した際、瞬時に起こる。つまりシステム1だ。「体は”とりあえず”で怒る」ということになる。

・加えて面白いのが、この反応は戦うか逃げるかするためのものであり、身体の状態で言えばこの2つは「同じこと」である点だ。

・先程言った臆病者が怒りやすいというのはこれを根拠にしている。問題は、「簡単にこの状態になること」であり、目に映る多くの物が「脅威」に見えるのなら、それは臆病者だろう?

このレベルになるとアンガーマネジメントよりカウンセリング行ったほうが早いだろう。

・身体が「とりあえず」で怒りを「実行可能な状態」にする。ここまではいいだろうか。

・システム2が動いている頃には、体はもう「怒っている」ことになる。まずこれをなんとかしなくてはならない。

・システム2/意識は、システム1に釣られて理由を捏造することがある。厄介なことに体も準備万端だ。ぶっちゃけ「怒っていい理由」を並べたほうが問題解決として手っ取り早いのだろう。で、その後しばらく経って後悔する、というのが人間。

・怒りを抑える方法として「10数えろ」と言うのは理にかなっている。アドレナリン等が出るのが「最初の6秒間」らしい。この状態は基本的に「加速」しているから、まぁ多めに10数えろというのは適切な処理だろう。

表現能力の必要性

例えば,思いどおりにいかない状況にいらだってい る,うまくできない自分に腹を立てている,相手が 悪いので仕返ししたいなど,「怒り」は様々である。

ところが,生徒たちは「むかつく」とか「うざい」 とか,単純な言葉で様々な感情を表現しようとする 傾向がある。

 http://www.edu-ctr.pref.okayama.jp/chousa/study/02kiyoPDF/02watanabe.PDF


・まぁ、そんなわけだ。「とりあえず」怒る。引用元は学校における生徒のアンガーマネジメントについてなのだが、暴力沙汰や器物破損など、やんちゃな事件が多いようだ。若いね。 

・「言葉に感情や意志が引きずられる」ことは実際に、頻繁にある。

・ちょっとした不快感でさえ「極端な言葉」を一々使っていると「怒っていい理由」になり得る。本人も本気で「自分はこれだけ怒っているのだ」思い込む。「短気な人間」の出来上がりだ。

・もう一度書いておくが、「どうしていいか判らないから怒る」ということがある。これは「上手く表現できない」というのがストレスだからだ。

・つまり頻繁に怒ることについての根本的な問題は「解決能力/表現能力がない」ことに由来する。

・ボキャブラリーとも語彙力とも言うが、「言葉のバリエーション」は増やしておいたほうがいい。前述の通り馬鹿の一つ覚えで極端な言葉しか使わずにいると「引きずられる」事がある。

・もう一つ、「言い方」を変えてみる方法もある。大体の場合こういう時はユーメッセージ(お前は○○だ)になりがちだが、アイメッセージ(私は○○だ)の言い方にしてみる。

・例を挙げると、まぁやたらと怒って「死ねばいいのに」と言う奴がいたとしようか。これはたとえ本人がその場にいない陰口でも相手がこうなって欲しい、というユーメッセージだ。

じゃあアイメッセージで言うとこの感情はなんだろうね。
「殺してやりたい」とは滅多にならないだろう。それより遥かに「弱い感情」なのはこの時点で判明する。

じゃあ「自分は相手をいなくなってもらいたいと思っている」としよう。そうなのだとしたら、それは何故?

たとえば相手がいることで不利益を被るのだろうか。それとも、相手自体が何かをして、それに対しての憎しみの感情からだろうか。

大抵の場合、「そこまでじゃない」。息してることすら許さんとまではあまりいかないだろう。皆無ではないが。

要するに、まず身体が怒り、自分が言った言葉が「補強」して、怒りがねちっこい陰湿なものに変質することがある。

こういう時、アイメッセージにすると怒りの理由と自分の発言との「つながりのなさ」が見えてくる。

初めから怒るほどの感情じゃなく、ちょっとムッとしただけかもしれない。そうだとすれば、別に全面戦争になりかねないような言葉を言う必要はなかっただろう。嫌味の一つでも用意しておけばいい話だ。

この場合は、怒りの強さを間違えたんじゃない。その必要性すら元から考慮していないのが原因になる。

・まぁ、少なくともアイメッセージにすると考察の「始まり」にはなる。自分の言葉に「何故」と問えば。

これがユーメッセージの「死ねばいいのに」だと、死んでほしい理由だけが雨後の筍のようにボコボコ出てくるだけで終わってしまう。相手に対する仕打ちも残酷なものになるだろう。

その内の大半は「それほどじゃない」ものであり、システム2のこじつけだ。

メタ認知に通じるものがあるが、物事を多角的に見ることは正しい判断にはとても有効になる。特に自分がやらかしている最中、あるいはやらかす寸前にこれができれば、それ以上やらかさずに済む。

・おまけで面白い話を一つ。英スタフォードシャー州キール大学心理学部より「暴言を発する行為には鎮痛作用がある」という研究結果が発表されたことがある。ストレスの発散のため、そして「自尊心を満たすため」に人は暴言を口にするのだ、という説。

・やたらと脅威を感じ、やたらと痛みを感じる人間は、攻撃的な言葉を口にしやすいということになる。まぁ、多感な子どもたちがこうなっても不思議じゃない。許してはやらんが。それが大人の仕事だろう。

・また、やたらと卑猥な言葉や過激な言葉を衝動的に口にするという「汚言症/コプロラリア」という症状もある。トゥレット症候群(俗に言うチック)の症状の一つ。

・どうも「禁句」は専用のカテゴリで脳に格納されているようだ。他の言葉ではなく、この症状は的確に「不適切な言葉」を口にする。

・トゥレット症候群はドーパミンの過剰な放出が原因ではないかと言われている。ドーパミンは人を興奮状態にさせる。つまり怒っている状態の人間と汚言症は「ドーパミンが出ている」という点では似ている。

・また、ドーパミンは食欲増進の効果がある。「やけ食い」って言葉を連想しないか?

・まぁ他にもアドレナリンやコルチゾールとか色々ホルモンはあるし、だからなんだって話だが。

・余談だが、汚言症で「卑猥な言葉を口にする」という点に反応して掲示板やツイッターやらで「俺らじゃん」との話になったことがあるっぽい。まぁTPO弁えてればなんでもいいんじゃない。

まとめ

・バカと臆病者ほどよく怒る。

・システム1の「雑な答え」を盲信するならば、後悔は必至だろう。


・怒りの「表現の仕方」が増えればそれだけやりすぎて後悔する理由がなくなる。


・言っておくが、「怒れなかったことに対する後悔」というのも、生きてればきっとある。卑怯なクズなんていくらでもいるからだ。だからこそ普段から頻繁にある「不要な怒り」とその中に紛れる「必要な怒り」を見分けるスキルが必要なのは分かってもらえると思う。 

■カテゴリ

アンガーマネジメント

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