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何故イジメの被害者や自殺者を「弱い」と言うのか?

何故イジメの被害者や自殺者を「弱い」と言うのか?

 

自殺者やイジメ、またはその原因となった者を訴えるようなニュースが流れると必ず出てくる意見に
「自殺するのは心が弱い」
「この程度で訴訟するなどありえない」
と言った意見がある。

こういったコメントに対して不快感を覚える人のほうが多いだろう。
興味深いのは彼らは別に被害者側に恨みがあるわけでも、加害者側にゴマをすっているわけでもないように見えるという点だ。

だが確実に被害者に対して「何か」を投影している。
被害者やそのニュースを通して「何か」を見て、抵抗している。
そんな風に見える。

§目次

◆「やられる方が悪い」
◆ラウド・マイノリティ
◆「自分のときは当たり前だった」
◆洗脳済み
◆よんひきのにわとりのはなし
◆ブレーマー
◆「弱い」じゃなくて「弱ってる」



◆「やられる方が悪い」

自死に対する差別と偏見があるのでは、と思いました。
その最たるものが、

「自死する人は弱かった、人の迷惑を考えられない自分勝手な人だった。だから自分とは関係ない」

という意識が心のどこかにある気がします。

一部のニュースサイトにはコメント欄があったり、そのページに関連したツイッターやフェイスブックでのコメントを引っ張ってきたりということをやっている。

大半は自分の意見や何が問題なのかを真面目に考えた考察なのだが、その中の一部には「やられる方が悪い」の一点張りなのがいる。

彼らは浮いている。
言っていることが考察でないのはもちろんだが、「意見」にも見えない。
ただただそう言って、「そういうことにしたい」かのようだ。

時には被害者のことを色々と調べ、「同情に値しない」と言うことにしたがる者もいる。

これについては実際に「自称被害者」というものはいるのだし、なんとも言えないのだが。
だが、その中には「こじつけ」レベルのものも確実にある。
まるで「そういうことにしたい」かのように。

◆ラウド・マイノリティ

一つ言っておくと、「弱い」と言っている者たちは(恐らくだが)マイノリティだ。
コメントの比率で言えば少ない。
言っていることが「皆同じ」だから目につくだけだろう。

つまり彼らはラウド・マイノリティ(声がでかいだけの少数派)であると思われる。

彼らのヤジは大別して3パターンある。
「昔はこれが当たり前。音を上げるのは弱いからだ」

「自分は同じような状況でも耐えた/乗り越えた。できなかったやつは弱い」

「自然淘汰。弱いから何されてもしょうがない」




◆「自分のときは当たり前だった」

老人たちが「自分たちの時代はそのくらい当たり前だった」と口を出してくるケースがある。

まぁ過労死やそれに依る鬱、自殺を例に上げてさくっと否定しておく。

・第一に当時の時代は「努力が報われる」という妄想が現実味を帯びていた。
「身を粉にして働く」「会社に骨を埋める」「血反吐を吐く思いで」etc。
こんなスローガンを掲げてまぁ実際に頑張っていたのかも知れないし、報われもしたのだろう。
「自分は正しかった」との認識が強化される程度には。

会社を「生き地獄」だと思っている人間に対してこれらの言葉を吐くのは、「そのまま死ね」と言っていることと変わらないのだが、それがわからないのだろうか。
まぁわからないのだろうな。

また、彼らは「自分はやり遂げた」という自尊心も強い。
若者からしてみればこの世代は『時代に恵まれただけのただの「勝ち逃げ」』に過ぎないのでかなり温度差がある。

今からは想像もつかないだろうが、バブル時代は「東京23区の土地の値段でアメリカ全土の土地が買える」と言う話が信憑性を帯びて広まっていたほどだ。
参照:外部リンク:http://fentonglassestore.com/03/002.html

誰もが「努力をすれば報われる」というのが真実味を帯びていた時代とは違う。
昔のような「終身雇用」が保証されてるなんて今では幻想に近い。
そもそも当時「リストラ」なんて言葉が一般的だっただろうか?

要するにモチベーション(希望や将来性と言ってもいい)も実際に「どれだけ報われるか」も一部の老人たちが言う「昔」とは全く違う。
話しにならない。

今の時代とは何もかもが違う。
要するに前提が間違っている。
比較のやりようがないほどに。

結局のところ、彼らは被害者に対しての共感能力を持ち合わせていない。
本気で「死んだり病気になるようなこと」だということがわからない。
何も分かっていないで思いついたことを言っている。

・第二に現在の企業の一部は「乞食根性」が染み付いており、社員から労働力を「物乞い」している状態だ。
サービス残業や休日出勤をさせておいて金は出さない、そうじゃなくても有給は取らせない、と言うのはよく聞く話だろう。
これが労働力の物乞い以外のなんだというのだ。

生活のため、つまりは生きていくために就職したのに命を削ることを要求されればそりゃ鬱にもなるだろう。

◆洗脳済み

今の時代の人間のほとんどは昔のような「狂信者」ではない。ただそれだけの話しだ。

そして現代の狂信者はブラック企業・ブラック社員と呼ばれている。

200時間残業しても、「36協定の70時間以上は(残業代を)つけてはいけない」ということが暗黙の了解になっていたという。
しかも、「そのサービス残業を武勇伝のように話す洗脳された社員も多数いました」

自ら「社畜」を名乗る者もいる。
大抵は自虐を込めてだが、その中にやはり誇らしげに名乗る者もいる。
まぁ乗り越えた達成感やら何やらがあるのだとは思うが、それらは個人の感想なのは忘れないほうが良いだろう。

・最近あった、電通の女性新入社員の過労自殺のニュースについて、元東芝の財務だかなんだかやってた某なんとかいうよくわからん老人が「月100時間の残業で過労死なんて情けない」とフェイスブックで発言、その後炎上して速攻で撤回して逃げたという騒ぎがあった。
(この者に対して現在の職場の武蔵野大へ抗議の電話を掛けることを勧めているサイトなどもあった)

投稿したのは、グローバルビジネス学科の長谷川秀夫教授。東芝で財務畑を歩み、ニトリなどの役員を歴任した後、昨年から同大教授を務める。

 武蔵野大などによると、長谷川教授は7日夜、「過労死等防止対策白書」の政府発表を受けてニュースサイトにコメントを投稿。
「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない」
「自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない」
などと記した。
かなりの批判が集中した。
死んだ人間に対して「情けない」とは人間性を疑う、こういった人間が被害者を量産する、などの批判だった。

批判する声が多かったことは良いことだ。やるじゃないか人間。
前述したとおり、「弱い」と発言する人間がマイノリティだという証拠でもある。

ちなみにこの長谷川某は「処分」が検討されている。
武蔵野大は10日、公式ホームページに「誠に遺憾であり、残念」などとする謝罪コメントを西本照真学長名で掲載。

「不快感を覚える方がいるのは当然」とし、長谷川教授の処分を検討している。

処分されるような事なのだが、それがわからない者が確実にいる。




◆よんひきのにわとりのはなし

・さて、自殺に対して「自然淘汰」を引き合いに出す者がいる。
彼ら曰く、弱いから淘汰されて当然、なんだそうだ。

…へぇ。

・私は幼少の頃習い事をしていたのだが、そこの先生に聞いた話(毎回決まって道徳めいた話を10分位する人だった)。
後で知ったがこの先生はどこぞの高校の教頭で、ボランティアでその習い事の先生をしていたんだとか。

・狭いかごの中にニワトリが四匹いれられている。
狭いのはストレスだ。
ニワトリたちは日増しにストレスを溜め込んでいく。

一番強いニワトリは二番目に強いニワトリに八つ当たりをする。
二番目のニワトリは三番目に八つ当たりをする。
三番目は四番目に八つ当たりをする。
一番「弱い」ニワトリ、四番目はただひたすらに耐えている。

四番目のニワトリは死んだ。
一番目のニワトリは二番目に八つ当たりをする。
二番目のニワトリは三番目に八つ当たりする。
一番「弱い」ニワトリ、三番目はただひたすらに耐えている。

三番目のニワトリは死んだ。
一番目のニワトリは二番目に八つ当たりをする。
一番「弱い」ニワトリ、二番目はただひたすらに耐えている。

二番目のニワトリは死んだ。
一番目のニワトリは狭いカゴに閉じ込められるストレスにただひたすらに耐えている。

一番「弱い」、最後のニワトリは死んだ。

元ネタは多分これだろう。
教師が子供のイジメなどについて考察する際に時々参考材料として引き合いに出されているのを見かける。
私が聞いたのは多分、私に話してくれた先生の脚色が入っている。
もしかしたらオリジナルの創作だったのかもしれない。

私は私でうろ覚えだからマザーグースリスペクト(?)で適当に補完してみた。
「そして誰もいなくなった」的な。

・なんてことはない、全員が似たようなレベルで「弱い」。
一生懸命自分より下のやつを探してイジメた所で、本質的なストレッサーである「狭いかごの中にいる」現状を打破する力はない。

・自然淘汰が真ならば、誰もが淘汰されるべきレベルで「弱い」。
ぶっちゃけて言えば、目くそ鼻くそだとか、五十歩百歩だとか、どんぐりの背比べだとか、そんな感じ。


そもそも、この世界観で「勝利」できるのは人格障害者だけだということがわからないのか。

・彼らが被害者を指して「弱い」ということは、「自分も同じ目に合うかもしれない」という可能性の指摘に他ならないのだが、まるで「自分は違う」と思っているかのように被害者に向かって勝ち誇る。
或いは自分に言い聞かせるかのように。

・「弱い」と言っている者はこれを認めないだろうけれどね。
認められないのが弱さなんだがね。
その弱さが他人を苦しめるんだがね。

◆ブレーマー

続きだが、人間は多かれ少なかれ「ブレーマー」の気質を持っている。
自分が持つべき責任を他人に背負わせたりして他人に負荷をかけている。
参照:課題の分離
まぁ基本的には「お互い様」と言う話だが、他人に全部背負わせようとする人間は少なくない。
最低なのは「助け合い」だとか言いながら自分は全く何もしない連中だが、これにしたって腐るほどいる。

これらは無意識的に行われ、やらかしたと気づくのは「やった後」であることがほとんどだ。
逆を言えばほとんどが「やった後」で気付いている。

そして残る。
罪悪感として。

そして思い出す。
こういった事態になったときの「心当たり」として。

また、そういった「他人が押し付けたいもの」を一身に引き受けて背負ってしまう者もいる。
優しすぎるのか、気弱なのかはそれぞれだろう。
そういった人間が他人が押し付けた荷物で「潰れてしまう」際、押し付けた奴らは罪悪感から「そいつが弱いからだ」と言う。

だがよく考えてもらいたい。
そもそも他人に自分の荷物を押し付けるのが弱さではないのか?

各々が自分が口にしている程度に「自分のことを自分でやる」「自分のやることに責任を持つ」ことが「本当に」出来ているのならこんなことにはならない。

弱いのは、誰だ?

なんてことはない。
彼らは現実に怯えているだけだ。

自分が今までに酷く遠回りだとしても既に「殺していたかもしれない」可能性に。

そして自分がこれから「やられる側」に周り「殺されるかもしれない」可能性に。

これら両方を考えたくないし、そもそも気づきたくない。

だから事件そのものを見て見ぬふりして、「なかったこと」にしようとする。
大抵は口を閉じ、見なかったことにする。
「自分には関係ない」と思いながら。

それすら出来ないほど不安な者は被害者を「弱い」と責める。

「自分は強者だからこんなことにはならない」と言い聞かせながら。

これはただ、自分が思い至った可能性に対しての拒絶反応だ。

◆「弱い」じゃなくて「弱ってる」

最後になったが、「弱い」と言う言葉自体が根本的に間違いだという解釈ができることを述べておく。
被害者たちの状態とは一時的なものであり、立て直せば元通りになる。
この状態を『ステータス異常』と表現した人を見かけたが、上手いね。

うつ病にある症状だが、精神的に視野がかなり狭くなる。
よく聞く「こうなる前に逃げればよかったのに」というのはあまり的確なアドバイスとはいえない。
逃げることすら考えられない。
そんな度胸も気力も湧いてこない。
そういった「状態」になる。
本人の「心の強さ」とかは関係ない。

これは言ってみれば「外傷」に近い。
足が千切れかけてる状態の奴に「走って逃げればいいじゃん」と言うバカはいるだろうか?

そんなレベルの話だ。

だからこそ周りの人間の迂闊なアドバイスや励ましが相手を追い詰める結果になったりする。
悪気はないんだろうが、過労鬱なんかで家族が「頑張れ」と励まし続けた結果自殺、なんて話も聞いたことがある。

結局のところ、もう限界なことを「やれ」と言っていることに他ならないし、出来ないと伝えた所で「そんなことも出来ないのか」と言われると彼らは予想する。

だから、本当に危険な状態の人間でも周りに理解されることは諦めて自分ひとりで耐えようとする場合がある。

「鬱になる人はむしろ心が強い(強すぎる)」と言う話を聞いたことはないだろうか?
まぁこういうことだ。

…で、もう一回聞くけど、本当に弱いのは誰だろうね。
自分は大丈夫、自分は違う、自分には関係ないと必死に自分に言い聞かせている者たちじゃないのかね。

少なくとも被害者たちは野次馬にバカにされる筋合いは無いと思うよ。
それでも死ぬことはないとは思うし、きっと逃げ道とかはいくらでもあったはずだとも思うが。

もしもあなたが辛い状況になったとしたら、周りの人間は励ましが下手なだけで敵というわけじゃないってことと、出口は必ずあるということはその時に思い出してもらいたい。

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カテゴリ:社会

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